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謎の胃の不調はどうして起こる?原因、自分でできる対処法、病院受診の目安を内科医が解説!

 

 

 

 

胃の不調の原因:機能的?器質的?

胃の不調はさまざまな症状として出てきます。

「胃痛」「吐気」「胸のつかえ感」「お腹が減らない」「お腹が張った感じ」「胸やけ」「ムカムカ」「酸っぱいものが逆流する感じ」など...

もちろん、一つだけでなく複数の症状が同時に出る場合があります。

 

症状は不快なものですが、75〜80%の人には検査でわかるような異常はありません(1)。(これを、器質的な異常はないと言います)

つまり、不調の原因は機能的な問題ということです。

「機能性胃腸症」が代表例ですが、このような機能的な問題であれば、命に関わることはほとんどありません。

 

 

 

機能性胃腸症の原因

胃の機能的な問題の原因ははっきり分かっていませんが、以下の点が着目されています。

ポイント

  • 自律神経や消化管の運動の問題
  • 痛みに対する過敏性
  • 感染症:ピロリ菌、感染性胃腸炎
  • ストレス

 

食べ物が消化される過程では、消化管の筋肉や内臓の自律神経が協力して働きます。このシステムに問題があると、胃にずっと食べ物が溜まっていることになり、「吐気」「嘔吐」「胸がつかえる」「お腹が減らない」などの症状が出ることがあります(2)。しかし、胃の動きがゆっくりな人のすべてに症状がでるわけではありません。

 

空っぽの時にはわずか50mL程度の容量の胃は、食事をすると1500〜2000mL程度まで膨らみます。この伸縮に敏感で、痛みを感じる人がいます(3)。なぜ一部の人が痛みを強く感じるのか、理由は分かっていません。

 

ヘリコバクター・ピロリは、胃に感染する細菌で、胃や十二指腸の炎症や潰瘍、癌を引き起こすことがあります。ピロリ菌の感染と機能性胃腸症の関連は疑われていますが、はっきりしません。除菌をすることで症状が改善する人は少数です(4)。もちろんピロリ菌は癌との関連もありますから、見つけたら除菌するべきではありますが。

 

また、機能性胃腸症は細菌やウイルス感染による急性胃腸炎で始まることがあります(5)。胃腸炎の後で、お腹の症状が長く続いた経験はありませんか? これは消化管の常在菌の変化が関与していると推測されています。

 

心理的、社会的なストレスの影響も言われています。機能性胃腸症は不安障害やうつ病、他の機能性身体症状 (過敏性腸症候群や慢性疲労など) との関連が知られています(6)

 

 

器質的な原因 + α

これがみなさんのご心配な部分ではないでしょうか。

簡単にまとめておきます。頻度が低い病気はあえて書いていませんので、ご了承ください。

消化管からくるもの他の内臓からくるもの代謝の問題薬 (よく使われるもの)
潰瘍胆石症炭水化物の吸収不良
(乳糖不耐症やセリアック病など)
鉄剤
ピロリ菌や寄生虫感染膵炎糖尿病鎮痛薬 (NSAIDs・アスピリン)
逆流性食道炎甲状腺機能異常女性ホルモン剤
電解質異常抗生剤
血管トラブルナイアシン
その他
(肉芽腫性疾患、胃不全麻痺など)

 

 

日本を含む東アジア地域は胃癌が多いです。

原因は様々ではありますが、ピロリ菌感染症の多さは一つの要因とされています。

Graphical presentation of prevalence of Helicobacter pylori infection across the world

文献(7)より引用

ピロリ菌は、幼少期に感染者の唾液や飲み水を介して感染することがほとんどです。(大人になってからの感染は稀です)

そのため、ご家族に胃癌の人がいる場合は食器の共有などに気をつけてみましょう。

 

また、薬剤性の原因にも注意が必要です。

鉄剤ナイアシンNSAIDsというカテゴリーの痛みどめ(イブプロフェン・ロキソプロフェンなど)、アスピリン はドラッグストアでも購入できます。

こういう成分のものを使っていないかは確認し、使っている場合は中止を検討してみましょう。

処方薬でも胃の不調が出るものはありますので、症状があればかかりつけの先生にご相談ください。

 

 

 

病院に行くべき症状

 

上の「器質的な原因」を踏まえた上で、病院に行ったほうが良い症状を説明します。

    注意

    • 痛みが強くて日常生活に支障がある
    • ダイエットしていないのに体重が減っている
    • 血便、タール便(黒色便)<クリックで写真が見れます>、血液混じりの嘔吐がある
    • ものが飲み込みづらい、飲み込むと痛い
    • 嘔吐を繰り返している
    • 家族に胃癌の人がいる
    • 60歳以上で初めて胃の症状が出てきた
    • 鉄欠乏性貧血がある (特に男性、閉経後女性)

こんな症状がある人は病院受診をおすすめします。

何科に行けばいいの?と悩んだら、消化器内科/外科 または 内科 を受診してくださいね。

 

病院では診察に加えて、胃カメラ、採血、ピロリ菌の検査 (呼気テストや便検査)をおすすめされる可能性があります。

 

 

胃の健康のために自分でできること

 

食事と嗜好品

実は食事の注意点は、原因の病態によって少しずつ異なります。

その中でも特に重要なものを書きますね。

胃によい食事

  • 低脂肪
  • 不溶性の食物繊維は調理する
  • 腹八分目以下で規則的に食べる
  • 禁煙
  • 禁酒:少なくとも減酒

 

脂っこいものは、胃から出ていくのに時間がかかります。一般的な食べ物は2〜3時間ですが、脂質の多いものは4〜5時間かかります。

また、脂質の消化には胆汁が必要ですが、胆汁も胃液に混じって逆流してしまうことがあります。胆汁の成分もまた、胃や食道の繊細な粘膜にダメージを与えます。

 

食物繊維には色々な効果があり、バランスよく (サプリメントではなく食品から) 摂ることは大切です。

しかし、胃の動きが悪いと不溶性の食物繊維を消化するのが難しいことがあります。

ですので、不溶性の食物繊維 (穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実など)は、小さく切ったりポタージュ状にして調理することをおすすめします。

食物繊維ってなに??という人は、このTarzanのWebページが参考になります。写真と数字でわかりやすいです。

水溶性食物繊維は、多少動きが悪くても普通に摂って大丈夫です。

 

胃腸炎のときにおかゆやうどんを食べるのは、この2点で理にかなっているわけですね!

それに加えて、野菜のポタージュやよく煮込んだスープもお腹に優しく、ビタミン類もしっかり摂れそうですね。

 

市販のポタージュには乳脂肪が入っていることが多いのがネックですが、これは乳製品不使用のようです。

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実はわたしもこれ、食べたことあります。なんか...ヘルシーな味がします。

 

Amazonで売っているこれも乳脂肪不使用です。豆乳が使われているので、アレルギーのない方はどうぞ。

結構美味しいです。

  

 

単純に食事の1回量が多いと、物理的に負担が大きいです。そのため、食事は規則的に、できれば少量でちょこちょこ食べると良いです。

寝る直前に食べるのは、あまり良くありません。胃酸が活発に出ている時間帯に横になれば、当然逆流しやすくなります。夕食後は寝っ転がらずに、立ってお皿を洗うほうがいいかもしれません。

寝る2〜3時間前には食事を終えているようにしましょう。

 

禁煙・禁酒も大切です。タバコを吸う人に機能性胃腸症が多いことは事実です(8)。また、喫煙・飲酒ともに食道と胃の間の括約筋の働きを弱めて胃酸の逆流を起こしやすくします(9)。さらに喫煙をすると唾液が減りますから、上がってきた胃酸を自然に押し戻す唾液の働きが弱まってしまいます。

 

逆流の症状がメインの人には、もう少し食事のポイントがあります。

逆流性食道炎の追加ポイント

  • 炭酸、カフェイン、チョコレート、ミント、香辛料、酸っぱいものを避ける
  • トローチやガムで唾液を増やす

余力があればぜひトライしてみてください。

 

食事は個別性が高い分野でもあるので、管理栄養士さんに相談できる機会があればぜひ活用してくださいね。

糖尿病や高血圧など、一部の病名がつけば、保険適用で栄養相談ができます。

病名によって、どんな食事をすべきなのかは異なります。「持病の管理をしながら胃にも優しい食事」のような、複合型の問題には、栄養士さんの専門性が大きく発揮されます。

ちなみに「自己判断でグルテンフリーしたい」とか「美容体重になりたい」のような相談は、保険適用ではできません。

 

 

健診

上でも書きましたが、日本は胃がんが多い国です。

文献(10)より引用。左上:男性が胃癌にかかる確率、左下、男性が胃癌で死亡する確率、右上:女性が胃癌にかかる確率、右下:女性が胃癌で死亡する確率。

 

検査によるデメリット (費用、偶発症)はもちろん無視できませんが、日本のような胃がん発生率の高い地域では、早期発見と早期治療はとても大切です

日本人は50歳からは定期的な胃癌の検診がおすすめですし、60歳を超えて初めて胃の不調が出た場合は病院での検査をおすすめします。

胃癌の健診は主に2種類あり、バリウムより胃カメラの方が感度が優れています(11)が、とりあえず受けやすい方で大丈夫です。

渾身の1回を10年おきにやるより、お手頃な検査を1〜3年ごとに定期的に受ける方がメリットが大きいでしょう。

胃カメラは胃癌だけでなく、逆流性食道炎や胃炎も見つけられますよ。

腫瘍マーカーの血液検査はお手軽ではありますが、費用対効果という意味ではおすすめしません。

癌本体を見つけ出さなければ治療はできませんが、腫瘍マーカーがわずかに上昇していても癌が見つからないことがあります。検査にお金も時間もかけて (もしかしたらCT等で放射線被曝までして)、その結果、「様子を見ましょう」となることもあります。めちゃくちゃ不安じゃないですか?それよりも、胃癌は胃カメラで、大腸癌は便検査で、子宮頚癌は細胞診で...というように、最初から癌本体を探す方が適切です。前立腺癌は例外的に腫瘍マーカーを調べるメリットが多少あります。閑話休題。

ピロリ菌の検査を健診のオプションでつけられる場合がありますので、ご家族に胃癌の人がいる場合などは検討しても良いですね。

 

 

その他

逆流性食道炎のある人は、適正体重を保つこと(肥満があれば減量する)、枕を高くして寝るこ(12)にも症状改善効果があります。

 

 

まとめ

最後にもう一度内容を確認しましょう。

ポイント

  • 胃の不調の75〜80%は機能的なものです
  • 「病院に行くべき症状」がある人は、消化器内科/外科 または 内科 を受診してください
  • 食事のポイントは、低脂肪、不溶性食物繊維の調理、腹八分目で規則的に食べる ことです
  • 禁煙と禁酒
  • 定期的な胃癌健診もおすすめ

 

別記事で「市販の胃薬の選び方」を解説していますので、よかったらそちらもご覧ください。

 

 

セルフメディケーションの大原則はDo No Harm (害をなしてはいけない)です。

自分でできることは自分で、悩む場合はぜひ医療機関を受診してくださいね!

 

関連投稿はこちら

 

参考文献

(1)Bytzer P, Talley NJ. Dyspepsia. Ann Intern Med. 2001 May 1;134(9 Pt 2):815-22. doi: 10.7326/0003-4819-134-9_part_2-200105011-00004. PMID: 11346316. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11346316/

(2)Vanheel H, Carbone F, Valvekens L, Simren M, Tornblom H, Vanuytsel T, Van Oudenhove L, Tack J. Pathophysiological Abnormalities in Functional Dyspepsia Subgroups According to the Rome III Criteria. Am J Gastroenterol. 2017 Jan;112(1):132-140. doi: 10.1038/ajg.2016.499. Epub 2016 Dec 13. PMID: 27958284. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27958284/

(3)Farré R, Vanheel H, Vanuytsel T, Masaoka T, Törnblom H, Simrén M, Van Oudenhove L, Tack JF. In functional dyspepsia, hypersensitivity to postprandial distention correlates with meal-related symptom severity. Gastroenterology. 2013 Sep;145(3):566-73. doi: 10.1053/j.gastro.2013.05.018. Epub 2013 May 20. PMID: 23702005. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23702005/

(4)Moayyedi P, Soo S, Deeks J, Delaney B, Harris A, Innes M, Oakes R, Wilson S, Roalfe A, Bennett C, Forman D. Eradication of Helicobacter pylori for non-ulcer dyspepsia. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Jan 25;(1):CD002096. doi: 10.1002/14651858.CD002096.pub2. Update in: Cochrane Database Syst Rev. 2006;(2):CD002096. PMID: 15674892. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15674892/

(5)Pike BL, Porter CK, Sorrell TJ, Riddle MS. Acute gastroenteritis and the risk of functional dyspepsia: a systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol. 2013 Oct;108(10):1558-63; quiz 1564. doi: 10.1038/ajg.2013.147. Epub 2013 May 28. PMID: 23711623. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23711623/

(6)Kindt S, Van Oudenhove L, Mispelon L, Caenepeel P, Arts J, Tack J. Longitudinal and cross-sectional factors associated with long-term clinical course in functional dyspepsia: a 5-year follow-up study. Am J Gastroenterol. 2011 Feb;106(2):340-8. doi: 10.1038/ajg.2010.406. Epub 2010 Oct 26. PMID: 20978482. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20978482/

(7)Zamani M, Ebrahimtabar F, Zamani V, Miller WH, Alizadeh-Navaei R, Shokri-Shirvani J, Derakhshan MH. Systematic review with meta-analysis: the worldwide prevalence of Helicobacter pylori infection. Aliment Pharmacol Ther. 2018 Apr;47(7):868-876. doi: 10.1111/apt.14561. Epub 2018 Feb 12. PMID: 29430669. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29430669/

(8)Ford AC, Marwaha A, Sood R, Moayyedi P. Global prevalence of, and risk factors for, uninvestigated dyspepsia: a meta-analysis. Gut. 2015 Jul;64(7):1049-57. doi: 10.1136/gutjnl-2014-307843. Epub 2014 Aug 21. PMID: 25147201. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25147201/

(9)Kaltenbach T, Crockett S, Gerson LB. Are lifestyle measures effective in patients with gastroesophageal reflux disease? An evidence-based approach. Arch Intern Med. 2006 May 8;166(9):965-71. doi: 10.1001/archinte.166.9.965. PMID: 16682569. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16682569/

(10)Morgan E, Arnold M, Camargo MC, Gini A, Kunzmann AT, Matsuda T, Meheus F, Verhoeven RHA, Vignat J, Laversanne M, Ferlay J, Soerjomataram I. The current and future incidence and mortality of gastric cancer in 185 countries, 2020-40: A population-based modelling study. EClinicalMedicine. 2022 Apr 21;47:101404. doi: 10.1016/j.eclinm.2022.101404. PMID: 35497064; PMCID: PMC9046108. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35497064/

(11)Choi KS, Jun JK, Park EC, Park S, Jung KW, Han MA, Choi IJ, Lee HY. Performance of different gastric cancer screening methods in Korea: a population-based study. PLoS One. 2012;7(11):e50041. doi: 10.1371/journal.pone.0050041. Epub 2012 Nov 29. PMID: 23209638; PMCID: PMC3510189. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23209638/

(12)Kaltenbach T, Crockett S, Gerson LB. Are lifestyle measures effective in patients with gastroesophageal reflux disease? An evidence-based approach. Arch Intern Med. 2006 May 8;166(9):965-71. doi: 10.1001/archinte.166.9.965. PMID: 16682569. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16682569/

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