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胃腸炎に!熱中症に!経口補水液完全ハック

 

 

 

 

経口補水液の基礎知識

「経口補水液」とは、腸からの水分の吸収に有利なように電解質等を調整した飲み物です。

 

経口補水液の成分

2002年にWHOが提唱した経口補水液(1)を元に、様々な団体・学会がガイドラインを作成しています。

また、この成分に近い市販製品も多く出回っています。

 

成分は下記の通りです。

経口補水液の成分

  • ブドウ糖 13.5g/L
  • 塩化ナトリウム 2.6g/L
  • クエン酸 2.9g/L
  • 塩化カリウム 1.5g/L

 

これを水に溶かすと、以下のような特徴を持つ「経口補水液」となります。

経口補水液の特徴

  • ブドウ糖と塩化ナトリウムのモル濃度が同じ
  • 浸透圧(245mOsmol/L)血漿浸透圧(285mOsmol/L)より低い
  • 下痢や脱水によって体液が酸性に傾くのを、クエン酸が是正する

 

 

経口補水液が良い理由

「ブドウ糖とナトリウムの濃度が同じ」「血液の浸透圧より低い」というのが経口補水液の特徴ですが、これがどのように効果につながるのでしょうか?

 

高校の化学の内容をちょっと振り返ってみましょう。

まず大前提として、

ポイント

水は、溶質があるところに移動する

という原則があります。

 

つまり、塩分を吸収できれば水分は浸透圧で勝手についてくるわけです。

小腸での塩分の吸収メカニズムの中で、代表的なものを図にしてみました。

 

 

 

感染性胃腸炎などで、これらの吸収メカニズムのどれが障害されても下痢がおきます。

しかし、「ブドウ糖とNa+の共輸送」のシステムだけは、感染性腸炎でも働きが維持されることがわかっています(2)

 

「ブドウ糖とNa+の共輸送」は、ナトリウム1分子とブドウ糖1分子がペアになって行われます。

なので、「ブドウ糖とナトリウムが同じ濃度で入っていることが大事になるわけです。

 

また、経口補水液の浸透圧が血液より低めに設定されているのは、浸透圧で水が腸管内腔に出ていくことを防ぐと考えられます。

 

 

経口補水液を飲む状況

経口補水液は、主に「感染性胃腸炎に伴う嘔吐下痢と、それによる脱水」についての研究がされてきました。

それによると、嘔吐下痢による脱水の治療としては、経口補水液は点滴並みの効果があり、合併症が少なくコスパも優れていることが分かっています(3)

 

ただし、胃腸炎の全てで経口補水液が必要なわけではありません。

軽症の胃腸炎で、脱水も軽いのであれば、

胃腸炎のときの経口補水液以外の選択肢

  • 薄めた果汁(4)
  • スープ
  • 薄味のおかゆ
  • お好みの電解質飲料

などで十分でしょう。

(経口補水液は味がちょっと...という人もいると思います)

 

最近は「Polymer-based ORS」と言って、ブドウ糖のかわりに、重湯のような多糖類で糖質を入れる組成でも効果が高いと分かっています。

薄味のおかゆは、まさにそのタイプのものになりますね!

 

また、いわゆる熱疲労(熱中症)に伴う脱水のときも、塩分を含む飲み物は効果的です。

経口補水液より少し塩分が濃い目の飲み物を飲むことで、暑い環境での運動パフォーマンスが上がるという報告(5)や、

点滴のほうが血液中の水分は早く増えるものの、体感的には口から飲む方が早く症状が和らぐ(6)という報告があります。

熱疲労自体は脱水があってもなくても起きますが、もちろん脱水がないに越したことはありません。

 

市販のスポーツドリンクは塩分濃度が低いのが難点です。

暑い環境で体調が悪い時には、経口補水液か「塩分濃度の高い熱中症対策ドリンク」、もしくは「一般的なスポーツドリンクに食塩を小さじ1/3程度追加」したものが良いかもしれません。

上に書いた研究ではNa 90mol/L(NaCl 5.2g/L程度)がおすすめされていました(5)

味の目安としては、味噌汁までいくと濃すぎるので注意してください。味噌汁はNa 170mmol/L近い(NaCl 3.9g/L程度)です。

 

 

経口補水液の注意点

何と言っても塩分が多いこと。これに尽きます。

脱水による症状がある場合には、脱水を改善するのが優先ですから、塩分過多はある程度許容せざるを得ません。

でも脱水がないのに、水代わりに経口補水液を飲んだら?

ちょっと塩分が多すぎるかもしれません。

 

厚生労働省の推奨(7)では、1日の塩分摂取量について男性は7.5g未満、女性は6.5g未満が推奨されています。

OS-1を1本(500mL)飲んだら、1日量の5分の1くらい。

ただでさえ一般的な日本人は食塩10gくらい摂っている人が多いですから、心配です。

 

高血圧や慢性腎臓病など、塩分制限が必要な方は特に注意が必要ですよ。

 

 

市販製品の選び方

成分の比較

市販の経口補水液はたくさんあります。

に書いた通り、ブドウ糖とナトリウムのモル濃度が同じなのがポイントですので、その視点で探してみました。

市販品は、そもそもブドウ糖の含有量が明記されている製品が非常に少ないため、選択肢が絞られています。

名称ブドウ糖(mmol/L)Na(mmol/L)K(mmol/L)モル濃度比
(ナトリウム:ブドウ糖)
浸透圧(mOsmol/L)
WHO (2002)
WHOロゴ
7574.1201:1.01245
OS-1
OS-1
10050201:2-
アクエリアス
経口補水液
アクエリアス経口補水液
83.342201:1.98263
経口補水液 G-OS
G-OS
1005020
1:2-
アクアサポート
アクアサポート
11150
20
1:2.22257〜265
スムーズイオン
経口補水液
スムーズイオン経口補水液
88.948191:1.85-
イオンドリンク
経口補水液パウダー
イオンドリンク経口補水液パウダー
46.7 ※注
48201:0.97-
エブリサポート
エブリサポート
44.4 ※注34231:1.30-

 

※注:ブドウ糖含有量は明記されていませんが、果糖や砂糖などのその他の糖が入っていない製品です。栄養成分表示の「炭水化物量=ブドウ糖量」と仮定して計算しました。

 

 

ここで示したものならどれでも良いと思います。

 

 

上の図を見ると、NaがWHOの標準より少ない製品ばかりのように見えます。

しかし、WHOの経口補水液は、クエン酸塩に含まれているナトリウムも計算に入れています。

日本の製品は「食塩相当量の表示から自分で計算したNa濃度」と「Na濃度の記載」がほぼ同じになるので、クエン酸の分がどうなっているのかよくわかりませんでした。

(詳しい方がいたら、お問い合わせフォームから教えてください!)

 

 

 

オススメ製品の徹底比較

でご説明したおすすめ製品の比較です。

名称形態 成分
(液体製品)
1本500mLあたり
の価格(2023/7確認)
販売サイト
OS-1
OS-1
液体
ゼリー
プレーン
青りんご
ブドウ糖(国内製造)、果糖
食塩/クエン酸(Na)
塩化K、リン酸Na、塩化Mg、
甘味料(スクラロース)、香料
液体:170.5円
ゼリー:160円/200g
粉:292円/1袋500mL用

アクエリアス
経口補水液
アクエリアス経口補水液
液体プレーン糖類(ブドウ糖(国内製造)、果糖)
、食塩/クエン酸
塩化K、クエン酸Na、
香料、甘味料(スクラロース)
158円
経口補水液 G-OS
G-OS
液体(G-OS)
ゼリー(S-OS)
粉(W-AID)
※形態で名前や
成分が違います
プレーン水(ナチュラルミネラルウォーター、
海洋深層水)、ブドウ糖(国内製造)、
食塩 / 酸味料、塩化K、
甘味料(スクラロース、ステビア)、
グルタミン酸Na
液体:198円
ゼリー:149円/200g
粉:59.6円/1袋300mL用)
アクアサポート
アクアサポート
液体
ゼリー
りんごぶどう糖(国内製造)、
食塩/酸味料、塩化K、
リン酸Na、硫酸Mg、
香料、甘味料
(スクラロース)
液体:141.5円
ゼリー:180円/200g
スムーズイオン
経口補水液
スムーズイオン経口補水液
液体プレーンブドウ糖(国内製造)、果糖、
塩 / 乳酸Na、クエン酸、塩化K
香料、リン酸Na、
グルタミン酸Na、硫酸Mg、
甘味料(スクラロース)
127円
イオンドリンク
経口補水液パウダー
イオンドリンク経口補水液パウダー
プレーンブドウ糖、食塩、
米胚芽エキス末、
米こうじ/クエン酸、
塩化K、乳酸Ca、香料、
甘味料(アスパルテーム
・L-フェニルアラニン化合物、
アセスルファムカリウム、
スクラロース)
炭酸Mg、微粒二酸化ケイ素
45.3円/1袋500mL用
エブリサポート
エブリサポート
プレーンぶどう糖(国内製造)、
デキストリン、食塩/塩化K、
クエン酸、クエン酸Na、
香料、リン酸Na、硫酸Mg、
グルタミン酸Na、
甘味料(スクラロース、
アスパルテーム
・L-フェニルアラニン化合物)、
二酸化ケイ素
64.9円/1袋500mL用

 

OS-1にはゼリーや粉末、青りんご味があります。

 

その他、「アクアソリタ」シリーズもゼリーやフレーバー違いの製品があるのですが...

製品サイトでブドウ糖含有量を見つけられなかったんです。原材料を見ても「砂糖」「ブドウ糖」が入っているため、ブドウ糖量がよく分かりません。

製品サイトの「糖質」=「ブドウ糖量」と仮定して計算すると、ブドウ糖(仮定)が105mmol/L、ナトリウムが34mmol/Lとなり、モル濃度比が1:3ほどになってしまいます。

こういう感じで、成分をしっかり確認できなかったので、今回は表に入れていません。

 

 

もし旅行用などで、粉末の製品が必要な場合、OS-1が王道ではありますが... 

ちょっと高すぎない?という方は、イオンドリンク経口補水液パウダーや、エブリサポートも検討してみてください。

ブドウ糖含有量は明記されていませんが、果糖や砂糖などのその他の糖が入っていない製品です。栄養成分表示の「炭水化物量=ブドウ糖量」と仮定すると、なかなか良い内容です。

(もしかしたらクエン酸ナトリウムの分、Na含有量は多めかもしれませんが)

 

 

 

スポーツドリンクとは違うの?

一般的なスポーツドリンクには糖質が多く、あまり塩分が入っていません。

比較するとこんな感じです。

名称食塩(g/L)炭水化物(g/L)食塩/炭水化物の重量比
(モル濃度比ではありません!)
WHO2.613.51:5.19
ポカリスエット
ポカリスエット
1.2671:55.8
アクエリアス
アクエリアス
1471:47
GREEN DA・KA・RA
GREEN DA・KA・RA
1441:44
味噌汁
Slism参照
3.9291:7.46

 

炭水化物と食塩の比率は、モル濃度ではなくただの重量比です。医学的には意味はありません。

いかに糖類が多いか感覚的にわかりやすいように、表記してみました。

時々、熱中症にならないようにがんばってポカリスエットを飲みすぎて、糖尿病が悪くなる方がいます。

 

 

 

経口補水液を自作する方法

今までご説明したように、市販品はWHOの推奨内容とぴったり同じ成分ではありません。

しかも高いです。

 

ですので、家族で飲む場合や、野外活動でたくさん飲む場合などは、自作してしまうのもアリだと思います。

レシピはこちらです。

    経口補水液のレシピ

    • 水 1L
    • ブドウ糖 13.5g/L (大さじ1.5杯ほど)
    • やさしお® 5.5g/L (小さじ1杯多め)
    • クエン酸 2.9g/L (小さじ1杯ほど)

 

ナトリウムだけでなくカリウムも入れなくてはならないので、「やさしお®」を使うのがミソです。

  • やさしおにはナトリウム塩だけでなくカリウム塩も入っています。もちろん「やさしお」以外の減塩しおでも作れますが、その場合はナトリウム・カリウムの比率が「やさしお」とは違うので、ご自身で計算してくださいね。

 

ブドウ糖やクエン酸は、適当にネットで買えばいいでしょう。

そんなに大量に必要ないですから、このへんはいかがでしょうか。

 

お好みの果汁などを入れて、飲みやすくするのも良いですね!

下痢ではないのなら、体液の酸アルカリバランスはそんなに問題にならないため、

クエン酸を買うのは省略して、レモン果汁を入れるのでも良いかもしれません。

果汁を入れると、賞味期限は短くなりがちですので、冷蔵庫に入れて数日以内に飲むようにしてくださいね!

 

 

 

 

まとめ

上記で紹介した経口補水液の選び方・使い方を実践すると、自分でできる中では最大の効果を得られるはずです。

最後にもう一度内容を確認しましょう。

ポイント

  • 経口補水液は体に吸収されやすく、脱水の改善に役立つ
  • ブドウ糖とナトリウムが同じ濃度で入っている製品を選ぶ
  • 経口補水液は簡単に自作できる

自分でできることは自分で、悩む場合はぜひ医療機関を受診してくださいね!

 

投稿はこちら

 

併せて読みたい

 

参考文献

(1)WHO Oral rehydration salts https://www.who.int/publications/i/item/WHO-FCH-CAH-06.1

(2)Pierce NF, Sack RB, Mitra RC, Banwell JG, Brigham KL, Fedson DS, Mondal A. Replacement of water and electrolyte losses in cholera by an oral glucose-electrolyte solution. Ann Intern Med. 1969 Jun;70(6):1173-81. doi: 10.7326/0003-4819-70-6-1173. PMID: 5789507. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5789507/

(3)Hartling L, Bellemare S, Wiebe N, Russell K, Klassen TP, Craig W. Oral versus intravenous rehydration for treating dehydration due to gastroenteritis in children. Cochrane Database Syst Rev. 2006 Jul 19;2006(3):CD004390. doi: 10.1002/14651858.CD004390.pub2. PMID: 16856044; PMCID: PMC6532593. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16856044/

(4)Freedman SB, Willan AR, Boutis K, Schuh S. Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016 May 10;315(18):1966-74. doi: 10.1001/jama.2016.5352. PMID: 27131100.  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27131100/

(5)Mora-Rodriguez R, Hamouti N. Salt and fluid loading: effects on blood volume and exercise performance. Med Sport Sci. 2012;59:113-119. doi: 10.1159/000341945. Epub 2012 Oct 15. PMID: 23075561. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23075561/

(6)Kenefick RW, O'Moore KM, Mahood NV, Castellani JW. Rapid IV versus oral rehydration: responses to subsequent exercise heat stress. Med Sci Sports Exerc. 2006 Dec;38(12):2125-31. doi: 10.1249/01.mss.0000235358.39555.80. PMID: 17146319. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17146319/

(7)e-ヘルスネット 厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-024.html

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